リーダーを志す君へ


松下幸之助政経塾の塾生とのやりとりを収録した問答集。

これは、政経塾の開塾当初のころのもので、先日の「君に志はなるか」よりも前のものみたいです。

内容は、「君に志はなるか」と同様に自分の気宇をもっと大きくしなければ…と思ってしまうような熱い議論がいっぱいでした。


■まず人間の把握から

それで、一つみなさんにぜひ頭に入れておいてもらいたいことがあります。

それは人間の把握です。

人間というものをはっきり把握しなくてはならない。

いまは人間というものが把握できていないわけです。

かりに身近な例をあげますと、羊飼いならば、その人は羊というものの性質をはっきりつかんでおかないと、羊飼いとして成功しないでしょう。

羊を馬だとか犬とかと同じ性質のものだと思って飼ってたら、失敗する。

「羊はこういう性質を持っている」という、羊の性質をはっきりつかんだ人でないと、羊飼いになっても成功しないわけです。


われわれの社会というものは、人間が飼い合いしていると言ってもいい。

人間がみな集まって、お互いに飼い合いしている。

私はみなさんに飼われている。

みなさんは私に飼われている。

したがって、みなさんは私をよく認識しなきゃいかん。

私はみなさんを認識しなきゃいかん。

結局、人間が人間自身を把握しなきゃいかん。

そして初めて、「こうしたらいいな」ということがわかるわけです。


だから、人間の把握が一番大事です。

この塾で、一番最初に諸君に訴えるものは、人間把握です。

人間というものを把握しているかどうかということから始めようと思います。

すべてそうです。