脳の学習力-子育てと教育へのアドバイス-
- 作者: サラ‐ジェインブレイクモア,ウタフリス,Sarah‐Jayne Blakemore,Uta Frith,乾敏郎,吉田千里,山下博志
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2006/10/17
- メディア: 単行本
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子どもへの教育は、いつごろから行えばよいか。
生まれたばかりの子どもがいる家庭は、どこでもこんな悩みがあるのではないでしょうか。
子どもへの教育は早ければ早い方がよい。
教育の効果が最も高い臨界期は3歳までである。
本書では、このような少し前の考え方は間違っていると否定しています。
最新の脳科学では、幼児期のうちに読み・書きなどの能力を身につける機会がなくても、その後の機会をきちんと与えれば能力は身につくことが実証されています。
臨界期というものはかっちりと固定されたものではなく、むしろ経験の影響を受けて脳が生涯にわたって変化する能力そのものがわずかに変化する敏感期であると解釈されています。
ただ、このときに変化して身につけた能力は、「自ら閉まる窓」となり、学習能力を制限します。生まれたばかりの赤ちゃんは、生まれたばかりのころはサルの顔を見分けることができるが、6か月を過ぎるとその能力は失われてしまいます。その代わり、より人間の顔の見分けがつくようになるそうです。
私たち人間にとっては、自分のいる環境ではめったにお目にかかれない物を見分けるよりも、いつも見る物を見分けられる方がずっと重要なんだそうです。
また、子どもを持つ親への具体的な情報としては、
◎言葉
・文法の習得は敏感期では左脳のみが反応する。
その後は両脳が反応するので、文法は敏感期の方が習得しやすい。
・逆に、語彙は時期による差は現れない。
◎数と計算
・数感覚の発達は4〜5歳ごろ。それ以前に無理に数を教えると数嫌いになってしまう。
◎読み
・子どもは成長するにつれて左脳で言葉に反応していくようになる。
年齢が低いうちは右脳で言葉に反応するので、文字ではなく耳から覚えさせた方がよい。
など非常に参考になることが説明されています。
さらに脳は、幼児期だけでなく生涯にわたって成長を続けていきます。
タクシー運転手は、通常の人間より空間記憶を司る海馬が大きい。これは、このような能力を持った人間だけがタクシー運転手になっているのではなくことは明らかです。
大人になっても、少ない刺激で脳に変化を及ぼすことができます。それは毎日の訓練がないと維持できない物ですが。しかし、刺激を与え続けることでニューロンの結合が強くなり、神経回路の伝達が速くなることで、成人の脳でも限界なく成長を続けていきます。
このように脳は生涯にわたり可塑的であり、結合は絶えず変化していきます。
さらに、脳細胞が減少していく40歳以降でも、刺激を与え続けることで、さまざまな時点で劇的に再組織化される。
そのように脳が発達していく間に細胞の軸作は太くなり、細胞間の信号伝達速度は高まる。
脳は、適切な刺激さえ与え続ければ衰えることなく、常に成長を続けていくのです。
- 作者: サラ‐ジェインブレイクモア,ウタフリス,Sarah‐Jayne Blakemore,Uta Frith,乾敏郎,吉田千里,山下博志
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