幕臣たちの明治維新

幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)

幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)


この本は、薩長などの幕末の志士といった歴史の表舞台に出てきた人物ではなくて、負けた方つまり幕府側の名もない中級・下級の幕臣たちが明治維新からその後をどのように生きたかということに紹介したものです。

いまとなってみれば明治維新によって幕府は倒れ、明治政府による体制が敷かれるというのが当然の事実であり、倒れた幕府・徳川家の肩を持つことのメリットはないように見えますが、たとえば産業革命以来の変革の時代といわれる現代において1年先のことも予測がつかないように、260年続いて江戸時代が終わるという変化の中にいるとそういうことが見えなくなるというのは本当のことのようです。


つまり幕臣には、幕府解体後、大幅な減俸でもよければ徳川家が移る静岡藩に移るか、新政府に使えるか、農業商業を行うかの選択肢が与えられましたが、多くのものが静岡藩への移住を希望したとのことです。


今考えれば新政府の官吏になるのが一番成功の近道のような気がしますが、薩長が跋扈している新政府にはいきたくないし、出世も薩長がいるので期待できないという部分はあったと思います。


自分の立ち位置を把握しつつ、今後の時代を見通す目も持つことは難しい。


そのことを痛感させられた1冊でした。






幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)

幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)